MDR1遺伝子
概説
- 英名:MDR1 gene
- 別名:ABCB1遺伝子
- 細胞内に取り込まれた有害たんぱく質を細胞外へ排泄するために必要なたんぱく質をコードする遺伝子のひとつ。
- イベルメクチン感受性や、抗腫瘍薬への耐性獲得、細菌の多剤耐性化など様々な薬剤代謝に関与している。
MDR1遺伝子とイベルメクチン
- ある特定の犬種(コリー種など)は、イベルメクチンに対して感受性が高いため、比較的低用量(100μg/kg)でも副作用が発生してしまう。そのため、以前はコリー種への高用量イベルメクチン投与は禁忌であった。
- 2001年にMealeyらによって、イベルメクチン感受性がMDR1遺伝子の変異であることが突き止められ、現在では遺伝子検査を行うこともできる。
- MDR1遺伝子はABCB1遺伝子とも呼ばれ、この遺伝子から作られるタンパク質は、薬物を輸送するポンプとしてはたらくP-糖蛋白であると考えられており、特に血液-脳関門における薬物のCNSへの流入を制限している。
- 2010年現在、MDR1遺伝子変異はコリー種のみならず、他の種でも発見されており、コリー、オーストラリアン・シェパード、シェットランド・シープドッグ、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、イングリッシュ・シェパード、ボーダー・コリー、ロングヘアー・ウィペットなどに認められる。
関連用語
関連文献
- MDR1遺伝子変異を持つコリーにおけるスピノサドおよびミルベマイシンの安全性の評価
Evaluation of the safety of spinosad and milbemycin 5-oxime orally administered to Collies with the MDR1 gene mutation., Sherman JG, Paul AJ, Firkins LD., Am J Vet Res. 2010 Jan;71(1):115-9. - MDR1遺伝子のミューテーションが関連しているコリー腫のイベルメクチン感受性
Ivermectin sensitivity in colies is associated with a deletion mutation of the MDR1 gene. Mealey K.L. et al. Pharmacogenetics 2001;11:727-733
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- 最終更新:2011-09-21 20:10:51