高カルシウム血症

概説

  • 英名・略語:hypercalcemia
  • 何らかの原因によって、血中カルシウム濃度が上昇すること。カルシウムイオンは生体内において、筋収縮、神経興奮、血液凝固、酵素活性、ホルモン分泌、細胞接着などの役割を果たしている。特に筋収縮に直接関与しているため、カルシウム濃度の異常は心筋、骨格筋、平滑筋の収縮に重大な問題をもたらす。

原因・要因

高カルシウム血症の原因は以下のものが考えられる
  • 腫瘍
    • リンパ腫
    • 多発性骨髄腫
    • 肛門嚢アポクリン腺癌
    • 乳腺癌
    • 前立腺癌
    • 扁平上皮癌
    • 骨腫瘍(原発性、転移性)
  • 原発性上皮小体機能亢進症
  • 副腎皮質機能低下症
  • ビタミン過剰症
    • カルシフェロール殺鼡剤中毒
    • 一部の植物
  • 急性腎不全
  • 慢性腎不全
  • 骨格障害
    • 骨髄炎
    • 肥大性骨形成異常
    • 骨粗鬆症
  • 中毒
  • 生理的
    • 成長期の動物
  • 医原性
    • カルシポトレイン投与
    • カルシウム過剰投与
  • 偽高カルシウム血症

症状

  • 高カルシウム血症の症状は、腎機能不全、神経筋障害、心筋障害、消化管障害にわけられる。

<腎機能不全>
  • 初期の高カルシウム血症では、腎機能障害が生じることによって、多飲、多尿、多渇が生じる。
  • 症状が進行すると、腎石灰化、腎血管収縮などにより不可逆的腎障害が生じることにより、急性腎不全に陥る。

<神経筋障害>
  • カルシウム濃度の上昇に伴い、神経伝達速度が低下し、沈うつ、無気力、昏睡などの症状が現れることがある。
  • また、てんかん発作や腱反射の低下が見られるようになる。

<心筋障害>

<消化管障害>
  • 消化管における高カルシウム血症の影響は、胃酸分泌の増加および胃腸運動の減少をもたらし、胃潰瘍および十二指腸潰瘍を発症しやすい状態になると考えられている。

<角膜へのカルシウム沈着>
  • 高カルシウム血症に伴い、角膜内部にカルシウムが沈着し、白く濁って見えることがある。

臨床検査


  • 心電図検査
    • 不整脈
    • PR間隔の延長
    • QT間隔の短縮

治療

  • 高カルシウム血症の治療は、原因疾患の治療、高カルシウム血症の補正、および続発疾患に対する支持療法を行うことである。原因疾患に対する治療は、それぞれの疾患によってことなるため、ここでは高カルシウム血症の補正および続発疾患の支持療法についてのみ記載する。
<高カルシウム血症の補正>
  • 生理食塩水による輸液
    血液中のカルシウムの希釈および尿中へのカルシウムの排泄促進を行うことができる。
  • フロセミドの投与
    腎尿細管からのカルシウム再吸収を阻害することができる。
  • ステロイド薬の投与
    骨吸収および腸管内カルシウム吸収を阻害する。
  • カルシトニンの投与
  • 低カルシウム食の投与

<続発疾患の支持療法>
  • カルシウムチャンネル遮断薬の投与
    高カルシウム血症によって心血管障害が生じている場合に投与することがある。
  • 胃洗浄
    主に中毒症例に対して使用される。
  • 腹膜透析
    重度腎機能障害によって、乏尿になった症例に対し、透析を行うことで血中カルシウム濃度を下げることもある。

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関連文献(参考文献



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  • 最終更新:2012-02-20 20:12:37

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