蛋白漏出性腸症
概説
- 英名・略語:Protein Losing Enteropathy; PLE
- 別名:蛋白漏出性腸疾患
- さまざまな原因により、消化管内(特に小腸内)にタンパク質が漏れ出ることで、低アルブミン血症となった状態を示す疾患群。多くの場合、慢性の下痢や消化不良を伴うが、稀にほとんど症状の見られない症例も存在する。
原因・要因
- 炎症性腸疾患
- 消化管腫瘍(特に消化器型リンパ腫)
- リンパ管拡張症
- 慢性腸閉塞
- 消化管内出血
- 肉芽腫性腸炎
- 鈎虫寄生
- パルボウイルス性腸炎(犬パルボウイルス感染症)
- 腸重積
- 真菌感染(日本国内ではほとんどない)
※上から3つまでが多い。
統計
- 比較的犬に多い
- 好発犬種:ヨークシャーテリアなど
病態
- 多くの場合、慢性の下痢もしくは軟便により消化不良を起こしている。
- 病態はゆっくりと進行する傾向にあり、止瀉薬や整腸剤などの治療に一時的に反応することもあるが、改善しないことが多い。
- 低アルブミン血症が重度になると、腹水が貯留する。
症状・徴候
- 下痢
- 嘔吐
- 体重減少(腹水貯留によりマスクされる可能性がある)
- 食欲不振
- 腹水、胸水
- 皮下浮腫
- 発作、血栓塞栓症
臨床検査
- 血液検査
- リンパ球減少症
- 低アルブミン血症、低タンパク血症
- 低コレステロール血症
- 低カルシウム血症
- 低マグネシウム血症
- 凝固系異常
- 腹水検査
- 超音波検査
- 内視鏡検査
- 尿検査(蛋白漏出性腎症を否定するため)
診断
- 血液検査より低アルブミン血症が認められ、その原因として肝不全や蛋白漏出性腎症など否定を行い、他の疾患を除外する。
- 確定診断は内視鏡もしくは外科的に腸粘膜組織を採材し、病理学的に診断。
- 診断後は、消化管内蛋白漏出の原因を追及する。
治療
- 原因によって異なる
<リンパ管拡張症、炎症性腸疾患>
<消化器型リンパ腫>
- 犬の消化器型リンパ腫は予後が悪く、抗腫瘍薬の投与などがおこなわれる。
- 猫の消化器型リンパ腫は比較的ゆっくりと進行するため、外科的処置やクロラムブシルによる治療などがおこなわれる。
<腸内寄生虫感染>
- 駆虫薬を投与する。
予後
- 原因によって異なる。
合併症
- 腹水、胸水
- 肺血栓塞栓症、血栓傾向
関連薬
予防
- なし
カテゴリー
関連用語
関連文献(参考文献)
- 犬における蛋白漏出性腸疾患
Protein-losing enteropathies in dogs., Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2011 Mar;41(2):399-418., Dossin O, Lavoue R.
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- 最終更新:2012-05-13 23:10:11