膿皮症
概説
- 英名・略語:pyoderma、中国語:脓皮症
- 犬において非常に多く認められる皮膚の細菌感染症および化膿性皮膚炎。
- 多くの場合、皮膚に常在するブドウ球菌が何らかの生体側の要因(ストレス、基礎疾患など)により増殖し、皮膚が細菌の増殖に伴って炎症反応を生じることによって発症する。発症後は痒みを伴うことが多く、徐々に皮膚病辺が広がっていく傾向にある。
- 多くは抗菌薬やシャンプー療法によって改善するが、中には難治性のものや薬剤耐性菌によるもの、複数の疾患が混合しているものなどは、単純な治療では改善しないことが多い。
原因・要因
- 最も多く認められる病原
- Staphylococcus pseudintermedius
- 多く認められる病原
- Staphylococcus schleiferi
- Staphylococcus aureus
- Staphylococcus hyicus
- 稀に認められる病原
- Pseudomonas aeruginosa
- Proteus mirabilis
- クレブシエラ属
- Escherichia coli
- エンテロバクター属
- アクチノミセス属
- ノカルジア属
- ミコバクテリア属
- 発症要因は生体側の要因が多く、多岐にわたる。
膿皮症を併発する基礎疾患として以下のものがあげられる。
細分類
- 感染部位の深度による分類
- 表面膿皮症
- 表在性膿皮症
- 深在性膿皮症
病態
- 初期には紅斑、丘疹、膿痂疹などが認められ、それらの皮疹を伴う脱毛が認められることもある。
- 発生部位は様々であるが、下腹部や背部などの体幹部での発生が多く、痒みに伴い、全身に広がる傾向がある。
- 病変が慢性化すると、表面のみの細菌感染だけでなく、皮膚深部へと感染が広がり、難治性の深在性膿皮症を引き起こす。
症状・徴候
- 痒みに伴い広がる皮疹
- 鱗屑(フケ)の増加
臨床検査
- 皮膚病変の広がりや病歴などから診断的治療やその他の皮膚検査が行われる。
- 皮膚掻爬検査
- 毛検査
- 細菌培養検査(薬剤感受性試験)
- 皮膚生検
- その他基礎疾患の検査
診断
- 特徴的な皮膚病変と合致する臨床検査および抗菌薬への反応などを加えて総合的に判断する。
治療
- 治療は、抗菌薬、シャンプー、トリートメント、抗ヒスタミン薬、局所療法などによって行われる。
- 皮膚のターンオーバーが行われるまで(約3週間)は、症状の改善がみられても抗菌薬を飲み続けたほうがよいと考えられている。
予後
- 耐性菌の関与や基礎疾患がなく、表在性の膿皮症であれば、抗菌薬により数週間以内に症状の改善がみられる。
- アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、外部寄生虫感染症、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などのほとんどの皮膚疾患に併発するため、抗菌薬による治療が奏功しない場合にはこれらの疾患を鑑別する必要が出てくる。
合併症
関連薬
予防
- 定期的にシャンプーを行い、皮膚表面の環境を清潔に保つことで予防効果がえられる。
カテゴリー
関連用語
関連文献(参考文献)
- 犬の表在性膿皮症に対する2種類のクロルヘキシジン製剤の比較
Comparison of two formulations of chlorhexidine for treating canine superficial pyoderma. ,Vet. R., 167, 532-533, 2010., Murayama N. et al.
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- 最終更新:2012-10-06 18:18:53