緑内障

概説

  • 英名・略語:glaucoma、中国語名:青光眼、韓国語名:녹내장
  • 何らかの原因で眼房水の排出障害が生じ、眼の中の圧力(眼内圧)が上昇することを緑内障と呼ぶ。緑内障の結果、角膜浮腫、疼痛、眼球突出などの様々な眼科症状を呈するようになる。
  • 発生原因により、原発性緑内障と続発性緑内障に分類される。

原因・要因

  • 緑内障の原因は主に眼房水の増加による眼内圧の上昇である。眼房水は毛様体によって産生され、虹彩と水晶体の間を抜け、隅角によって排泄されている。これらのどこかに異常をきたせば、眼内圧は上昇することになる。

<原発性緑内障>
  • 先天性隅角形成不全などにより、隅角からの眼房水の排泄障害によって、眼内圧が上昇してしまう状態。
  • ヒト、犬に比較的多く発生が見られる。
  • 両側性に発症がみられる。また、片側眼球に発症が見られた場合においても、2年以内に50%の確率でもう片方への発症が見られる。
  • 好発犬種
    プードル、バセット・ハウンド、ビーグル、アフガン・ハウンド、アメリカン・コッカースパニエル、イングリッシュ・コッカースパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ハスキー、エルクハウンド、サオエド、シャーペイ、チャウチャウ、ダルメシアン、ブーヴィエ・デ・フランドルなど

<続発性緑内障>
  • はっきりとした原因によって房水流出路の一部が障害されることにより、房水圧が上昇することで、眼内圧が上昇した状態。以下の原因が考えられる。
    • 炎症(ブドウ膜炎)
    • 前房出血
    • 前房への色素沈着、脂肪沈着
    • 水晶体脱臼、水晶体亜脱臼
    • 白内障
    • 虹彩癒着
    • 眼内腫瘍、眼球後方からの圧迫
    • 巨大裂孔性網膜剥離
    • 眼内手術
  • 猫や馬に比較的多いとされている。

<先天性緑内障>
  • 稀に生後間もなく緑内障になることがある。
  • 原因としては先天性の隅角形成不全などが考えられている。

分類

<発生原因による分類>
  • 先天性緑内障
  • 原発性緑内障
  • 続発性緑内障

<進行度合いによる分類>
  • 急性緑内障
  • 亜急性緑内障
  • 慢性緑内障

<隅角の状態による分類>
  • 解放隅角緑内障
  • 閉塞隅角緑内障

<組み合わせによる分類>
  • 原発性開放隅角緑内障
  • 原発性閉塞隅角緑内障
  • 続発性開放隅角緑内障
  • 続発性閉塞隅角緑内障

症状・病態

<角膜浮腫>
  • 眼内圧の上昇に伴い、角膜内皮が損傷され、結果として角膜浮腫を生じさせる。角膜は肉眼的に白濁したような状態になる。

<疼痛>
  • 眼内圧の上昇により、重度の疼痛が生じる。そのため、動物は眼を頻繁に掻く、床やクッションに顔をこすりつけるなどの症状を呈するようになる。
  • この疼痛は緑内障が慢性化すると緩和される傾向にあるが、完全に痛みが無くなることはない。

<行動の変化>
  • 緑内障の疼痛が影響すると考えられる行動の変化が見られるようになる。
  • 頭部付近を触ると嫌がる、狭いエリアへ隠れたがる、食欲が減退するなどの症状が見られる。また、時に攻撃性が増し、飼い主に対して噛む、引っ掻くなどの攻撃をしてくる場合がある。

<瞳孔の散大>
  • 眼内圧の上昇に伴い、瞳孔は散大する。これにより、隅角はより閉塞しやすい状態を作り出し、眼房水流出障害を招くことで、眼内圧はさらに上昇しやすい状態を作り出し、緑内障は悪化する。
  • 眼内圧の上昇に伴う瞳孔散大であるため、光をかざしても対光反射による瞳孔収縮は認められない。
  • 瞳孔が散大しているため、タペタムによる光反射が強く感じられるようになる。そのため、「眼がいつもと違う」、「眼がいつもよりギラギラしている」といった異常が生じる。

<強膜の充血>
  • 動物の眼の中でいわゆる白眼に相当する部分の充血がみられる。

<視力障害>
  • 眼内圧が40mmHgを越えた状態で、24時間以上経過すると、視神経に重大な障害が発生し、視力を消失する。
  • これは眼圧が高ければ高いほど、視力喪失までの時間が短いと考えられるため、可能な限り早い治療を行う必要がある。

<牛眼>
  • 眼内圧の上昇が続くと、角膜、強膜の拡張が生じ、目が飛び出ているような症状が現れる。これを牛眼という。
  • いったん牛眼になってしまうと、眼圧を低下させる処置を行っても、元に戻ることは困難である。

<水晶体脱臼>
  • 眼球の拡大に伴い、水晶体を支えるチン小帯が断裂することで発生する。
  • また、水晶体脱臼は緑内障の結果生じるものであるが、水晶体脱臼が緑内障の原因となることもある。

臨床検査

  • 眼圧測定
    眼内圧が30mmHg以上であること、および緑内障に特徴的な所見が認められることより緑内障を診断することができる。
  • 隅角鏡検査
    麻酔下で隅角の状態を直接見るための検査。特に原発性緑内障の早期診断に有用である。
  • 超音波検査
    眼内腫瘍の検出、水晶体異常の検出などを目的としておこなわれる。

治療

  • 緑内障の治療は、原因や治療目的によって異なる。特に治療目的が視力の維持であるか、疼痛の緩和であるかは重要である。
<視力の維持を目的とした治療>
  • 急性緑内障が発症してから、間もない場合、視力維持を目的とした以下の内科的治療がおこなわれる。
  • プロスタグランジン関連薬の点眼
  • 浸透圧性利尿薬の投与
  • 炭酸脱水素酵素阻害薬の点眼・内服
  • β受容体拮抗薬の点眼

<疼痛緩和を目的とした治療>
  • 慢性化し、視力が消失した眼に対しては疼痛緩和を目的として降眼圧薬を使用する。
  • しかし、多くの場合は疼痛の完全な消失は望めない。疼痛を完全に抑えるためには外科的治療が必要である。

<外科的治療>
  • 毛様体破壊術(毛様体光凝固術、冷凍凝固)
    眼房水の産生元である毛様体をレーザーなどで破壊することにより、眼圧の上昇を抑える方法。
  • 前房シャント手術(バイパス手術)
    前房内に眼房水を排泄するインプラントを設置する方法。
  • 眼球摘出術
  • 義眼挿入術

<続発性緑内障に対する治療>
  • 続発性緑内障は、出血、炎症、または腫瘍などの原因が他にあるため、眼圧を低下させる治療と同時に、原因となる問題に対する治療を行う必要がある。
  • 治療詳細はそれぞれの原因疾患にて解説する。

関連薬

<プロスタグランジン関連薬>

<副交感神経刺激薬>
  • ピロカルピン

<交換神経遮断薬>
  • カルテオロール
  • チモロール
  • ニプラジロール
  • ブナゾジン
  • ベタキソロール
  • レボブノール

<交感神経刺激薬>
  • ジピベフリン

<炭酸脱水素酵素阻害薬>
  • アセタゾラミド
  • ドルゾラミド
  • ブリンゾラミド

<浸透圧性利尿薬>

予防

  • 原発性緑内障が片眼に発生した場合、50%以上の確率で2年以内に反対側の眼にも緑内障が発症するとされている。
  • そのため、予防的に点眼を行うことがある。予防点眼として、炭酸脱水素酵素阻害薬が推奨されている。

カテゴリー


関連用語


関連文献(参考文献

  • Feline primary open angle glaucoma, Vet Ophthalmol. 2008 May-Jun;11(3):162-5., Susan Jacobi, Richard R Dubielzig
  • Recovery of canine retina and optic nerve function after acute elevation of intraocular pressure: implications for canine glaucoma treatment, Vet Ophthalmol. 2007 Nov-Dec;10 Suppl 1(0):101-7., Sinisa D Grozdanic, Milan Matic, Daniel M Betts, Donald S Sakaguchi, Randy H Kardon
  • Circadian rhythm of intraocular pressure in cats, Vet Ophthalmol. 2007 May-Jun;10(3):155-61., M. J Del Sole, Pablo H Sande, J. M Bernades, Marcelo A Aba, Ruth E Rosenstein
  • Effects of the application of neck pressure by a collar or harness on intraocular pressure in dogs, J Am Anim Hosp Assoc. 2006 May-Jun;42(3):207-11., Amy M Pauli, Ellison Bentley, Kathryn A Diehl, Paul E Miller
  • Effects of Topical Nipradilol and Timolol Maleate on Intraocular Pressure, Facility of Outflow, Arterial Blood Pressure and Pulse Rate in Dogs, Vet Ophthalmol 7[3]:147-150 May-Jun 2004 Prospective Study 19 Refs
  • Effects of Topical Nipradilol and Timolol Maleate on Intraocular Pressure, Facility of Outflow, Arterial Blood Pressure and Pulse Rate in Dogs, Vet Ophthalmol 7[3]:147-150 May-Jun 2004 Prospective Study 19 Refs, S. Maehara, K. Ono, N. Ito, K. Tsuzuki, T. Seno, T Yokoyama, K. Yamashita, Y. Izumisawa and T. Kotani


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  • 最終更新:2011-09-21 19:22:53

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