犬糸状虫症
概説
- 英名・略語:Heartworm disease、韓国語:필라리아증
- 蚊によって媒介される犬糸状虫(フィラリア)によって引き起こされる病気の総称。
病原
- 学名:Dirofilaria immitis
- 蚊によって媒介されたフィラリア幼虫は犬などの動物体内に侵入し、感染後およそ150日ほどで心臓に到達し、成虫となり、ミクロフィラリアを産生するようになる。
フィラリアの生活環
<動物体内>
- 蚊の吸血によってL3幼虫が動物皮下に侵入する。
- L3幼虫は10日ほどでL4幼虫となり、筋線維間を移動しながら皮下、筋肉、脂肪組織に一次的に寄生する。
- L4幼虫はL5幼虫となり70日~100日ほどで静脈内を通り、肺動脈に到達する。
- L5幼虫は6ヶ月ほどでミクロフィラリアを産生するフィラリア成虫となる。
<蚊体内>
- 動物血液とともにミクロフィラリアを吸血する。
- 蚊体内におけるミクロフィラリアはL1幼虫、L2幼虫へと成長する。
- その後L3幼虫となりマルピーギ管へと寄生し、吸血による動物体内への侵入を待つ状態となる。
分布・疫学
- 日本では16種類の蚊がベクターとなりえるため、全国的に感染が拡大している。媒介する主な蚊として、アカイエカ、ヒトスジシマカ、トウゴウヤブカなどがあげられる。
- 北海道ではベクターとなる蚊が少ないため、あまり発生が無い。
症状
- 犬糸状虫症の主な症状はこのフィラリア成虫が右心室および肺動脈に寄生することによって生じる右心不全、肺動脈損傷に起因するものが多い。主な症状は、運動不耐性、発咳、喀血、呼吸困難、腹水、ネフローゼ症候群、体重減少などである。
- また、フィラリア成虫が寄生している動物では、時に大静脈症候群という急激な症状を示すことがある。これは、フィラリア成虫が右心系や大静脈に変位寄生することで発生する致死的疾患であり、緊急治療が行われることもある。
治療・予防法
- フィラリア成虫の治療は内科的、外科的のどちらの選択をしても、リスクを伴うものである。
- 内科的治療としてはメラルソミンなどによって行われるが、成虫が死亡した際、肺動脈に流れ血栓症を生じるリスクがあるとされている。
- 外科的治療は心臓からフィラリア成虫を直接つり出す方法があるが、心不全を起こしている状態での麻酔は非常にリスクが高いといわざるをえない。
- その他の方法として、低用量のイベルメクチンを長期間投与することで、フィラリア成虫の寿命を待つという方法も考えられている。
- また、ボルバキア寄生に対し、治療前にドキシサイクリンを投与することがある。
- 以上の理由から、犬糸状虫に対しては積極的な予防を推奨する獣医師が多い。
- 予防にはイベルメクチン、ミルベマイシンなどのマクロライド系抗菌薬を用い、フィラリア幼虫を定期的に駆虫する方法が取られている。
カテゴリー
関連薬
関連用語
関連文献
- American Heartworm Society, Canine Guidelines
- Evaluation of lung pathology in Dirofilaria immitis-experimentally infected dogs treated with doxycycline or a combination of doxycycline and ivermectin before administration of melarsomine dihydrochloride. , Vet Parasitol. March 2011;176(4):357-60. , L Kramer; G Grandi; B Passeri; P Gianelli; M Genchi; M T Dzimianski; P Supakorndej; A M MANSOUR; N Supakorndej; S D McCall; J W McCall
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- 最終更新:2013-09-18 06:58:25