リンパ腫
概説
- 英名・略語:lymphoma, lymphosarcoma
- 別名:リンパ肉腫、悪性リンパ腫、LSA
- リンパ腫とは、リンパ系悪性腫瘍であり、骨髄原発ではないものをいう。骨髄原発のリンパ系腫瘍はリンパ球性白血病としてリンパ腫とは区別されており、リンパ腫はそれ以外の臓器(リンパ節、肝臓、脾臓、皮膚など)が原発のものをさす。
- リンパ腫は犬、猫ともに発生が多いこと、および化学療法(抗腫瘍薬)に対する反応性が高いことから、数多くの研究報告がされている。そのため、このサイトでも複数の項目にわたって説明していく。
- リンパ腫(犬)
- リンパ腫(猫)
- リンパ腫の分類
- リンパ腫の化学療法
- リンパ腫の腫瘍随伴症候群
- リンパ腫の予後因子
原因・要因
- 犬のリンパ腫の病因は多岐にわたると考えられており、特定の原因は未だにわかっていない。しかし、特定の犬種に高率に発症することから遺伝的素因が検討されている。
- 要因として除草剤、強力な磁場が関連するという報告がある。また、都市部の犬に多いとも報告されている。
- 好発犬種
ボクサー、バセット・ハウンド、ロットワイラー、コッカー・スパニエル、セント・バーナード、スコティッシュ・テリア、エアデール・テリア、ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバーなど - 猫のリンパ腫の原因のひとつとして、猫白血病ウイルスの関与が考えられている。最近では、ワクチンの普及および屋内飼育猫の増加に伴い、猫白血病ウイルス陰性のリンパ腫も割合として増加しつつある。
病気の概要
- リンパ腫の症状は原発部位によって大きく異なる(リンパ腫の解剖学的分類を参照)。そのため、リンパ腫に特徴的な症状というものは、あまり認められない。触診にて複数の浅部リンパ節の腫脹がみられ、かつ感染症が除外できる場合、年齢、品種などを考慮したうえで、リンパ腫を疑うことができると考えられる。
- 発生部位により様々な症状がみられるが、リンパ腫が進行すると全身のリンパ節や消化管、その他の臓器に転移がみられるため、転移部位によってまた症状が変化していく。
- たとえば、リンパ腫が消化器系に発生した場合、嘔吐、下痢、体重減少、消化管出血などの消化器症状が現れる。また、リンパ腫が眼に発生した場合には、失明、ブドウ膜炎、緑内障などの合併症を引き起こす。
- 最終的に全身への腫瘍細胞の転移および腫瘍細胞の絶対数の増加により、複数の腫瘍随伴症候群(リンパ腫の腫瘍随伴症候群を参照)が発生し、動物の状態が悪化すると考えられる。
臨床検査
治療
- リンパ腫は化学療法が著効する数少ない悪性腫瘍である(リンパ腫の化学療法を参照)。そのため、第一選択として化学療法が選択され、積極的な治療がおこなわれている。現在リンパ腫の化学療法では、多剤併用療法が一般的に行われ、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン、シクロフォスファミド、L-アスパラギナーゼなどの薬剤を時間差で投与することで、長期的な寛解期間をえられると考えられている。
- そのほかの治療として、放射線療法、外科療法、免疫療法などが検討されている。
予後
- リンパ腫の治療を全く行わなかった場合、文献的には4~6週間で死亡するとされている。
- 化学療法を行った場合、個体差はあるものの1年以上寛解、生存できる可能性がある(リンパ腫の化学療法を参照)
関連薬
カテゴリー
関連用語
関連文献 (参考文献)
- 犬のリンパ腫リスクと住宅への磁場の暴露
Residential exposure to magnetic fields and risk of canine lymphoma., Reif JS, Lower KS, Ogilvie GK., Am J Epidemiol. 1995 Feb 15;141(4):352-9. - 犬の悪性リンパ腫における症例対象研究:飼い主が除草剤(2,4-D)を使用することと正の相関が見られた
Case-control study of canine malignant lymphoma: positive association with dog owner's use of 2,4-dichlorophenoxyacetic acid herbicides., Hayes HM, Tarone RE, Cantor KP, Jessen CR, McCurnin DM, Richardson RC., J Natl Cancer Inst. 1991 Sep 4;83(17):1226-31. - 犬の造血器系腫瘍の診断および治療
Diagnosis and treatment of canine hematopoietic neoplasms., MacEwen EG, Patnaik AK, Wilkins RJ., Vet Clin North Am. 1977 Feb;7(1):105-18. No abstract available.
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- 最終更新:2013-04-02 06:32:07