キシリトール中毒
概説
- 英名・略語:Xylitol intoxication
- 甘味料であるキシリトールを摂取することによって発生する中毒。
- キシリトールは血糖値を低下させるホルモンであるインスリンの分泌を促すため、摂取後に低血糖を起こす可能性がある。
- キシリトールの吸収や代謝は動物種によって異なるため、人間ではほとんど問題とならないような量でも犬では致死的な量となることがあるため、注意が必要である。猫での感受性は不明。
- 犬ではキシリトールの吸収スピードが早く、吸収後のインスリン放出量も多い(グルコースの約6倍)ため、重度の問題を起こす。
中毒物質・中毒量
- キシリトール
- 0.1g/kg以上で低血糖を生じる可能性がある。(犬)
- 0.5g/kg以上で肝障害を呈する可能性がある。(犬)
- その他、キシリトール感受性の高い動物として、牛、羊、ウサギ、ヒヒなどが報告されている。
※ヒトでは130g以上食べても下痢を起こす可能性がある程度である。
病態
- キシリトール摂取後すぐにあらわれる症状として嘔吐がある。
- その後、30~60分後に低血糖が始まる可能性がある。
- 時に低血糖が12時間後に現れることもある。
- その後、12~24時間後に肝障害に陥る可能性がある。
症状・徴候
臨床検査
診断
- キシリトールの摂取歴、低血糖、神経症状などをもとに診断する。
治療
<処置>
- 摂取後間もない場合には、催吐処置を行う。
<解毒>
- キシリトールに特異的な解毒薬はない。
<対症療法>
- 低血糖に対してグルコース製剤の投与を行う。
- 低カリウム血症、低リン血症に対して適切な製剤の投与を行う。
- 肝障害に対して、肝臓薬の投薬や輸液を行う。
<禁忌>
- 活性炭製剤によるキシリトールの吸着はあまり期待できないと報告されている。
関連薬
- 輸液関連薬
- グルコース製剤
予後
- 摂取量が少なく、適切な治療を行えば、予後は良好。
- 低血糖は12~72時間の間に回復する。
- 軽度の肝障害は数日間で改善する。
- 予後不良因子として、高リン血症がある。
予防
- キシリトールを食べさせない。
- キシリトール以外の人工甘味料は今のところ問題ないとされている。
カテゴリー
関連用語
- 血糖値
関連文献(参考文献)
- APCC(Animal Poison Control Center)
- 8頭の犬におけるキシリトール摂取と関連した急性肝不全および血液凝固異常
Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs, J Am Vet Med Assoc. 2006 Oct 1;229(7):1113-7., Dunayer EK, Gwaltney-Brant SM.
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- 最終更新:2011-11-06 09:39:19